遺産相続の手続きの中では、遺留分減殺請求と相続放棄の時効に注意

遺産相続においては遺言の内容が尊重されます。
相続人以外の人の手に多くの財産が渡ることもあります。

法定相続人の相続分が、法律で定められた最低限の割合よりも少ない場合は、多くもらっている人に請求することができます。
しかし、そうした手続きは無期限に行えるわけではありません。
時効があるため、悠長には構えていられないかも知れません。

相続にまつわる時効の設定を知り、計画的な手続きを行いましょう。

私たちに馴染みがあるのは刑法の時効

時効と聞くと真っ先に思い浮かべるのは、刑事事件の時効ではないでしょうか。
「凶悪殺人犯が時効寸前で逮捕された」などというニュースを聞いたことがある方もいるでしょう。

この場合の時効とは正確には公訴時効と言います。
犯罪後一定期間が過ぎることで刑事訴追が許されなくなる時効のことを指しています。
たとえば、人を死亡させた場合、無期懲役に当たる罪の時効は犯罪行為から30年間となっています。

時効制度はなぜ存在しているのか

時効とは、ある事実状態が一定期間続いた場合に、その状態に権利関係を合わせる制度です。
時効が関係するのは民事法と刑事法です。

刑法の時効に関して言えば、重大な犯罪をしておいて、数十年の逃亡で罰が免れるのはおかしいという世論があります。
これではまるで時効は不正な者を擁護するかのようです。
時効の意義とは何なのでしょうか。

ここで、時効制度の背景となっている考えを見ていきましょう。

時効の意義1 法律関係の安定

長期間続いた事実状態には、その状態に基づいた様々な法律関係が構築されてしまっています。
法的に不適切だからといってそれを覆すと、社会生活を乱すことになりかねません。
法律関係の安定のために、長く続いた状態が尊重されるのです。

時効の意義2 証明困難の救済

長期間が経過すると、権利関係を証明する資料が散逸しているおそれがあります。
それによって権利関係を証明することができない者がでてきます。
そこで、時効によって権利の取得・消滅を認め、証明困難な者を救済します。

時効の意義3 権利の上に眠るものは保護に値せず

法律は長期間にわたり事実状態を放置してきたような権利者は、積極的には保護するに値しないと考えます。
もっと早期に別の行動を起こすこともできたはずですが、それを怠っていたのであれば、後になって現態を覆すべき正当性は認めにくいということです。

民法の時効には2種類ある

民法には、次の2つの時効があります。

取得時効

取得時効とは、他人の物を一定期間継続して占有したした者に財産権を与える制度です。
所有の意思をもって、平穏かつ公然に、他人の物を占有することで成立します。
10年間の占有で認められる短期の取得時効と、20年間の長期の取得時効があります。
短期の場合は何も知らない状態で占有していたことが条件となります。

消滅時効

消滅時効とは、一定の期間の経過によって、権利が消滅する制度です。
相続に関する時効はこの消滅時効です。

他にも、債権は10年が経過すれば消滅時効によって権利が無効になります。
債権とは金銭や物品を請求できる権利のことですので、これが消滅すれば借金を取り立てることができなくなります。

相続手続きの中で時効があるもの

遺産相続において時効が関係するのは、以下のときです。
順に見ていきましょう。

  • 相続権を放棄するとき
  • 不当に少ない遺産を受け取り、正当な分を請求したいとき
  • 相続税を支払うとき

相続放棄の時効は3か月

相続と聞くと、金目のものを思い浮かべるかもしれませんが、遺産の中には借金のような債務も含まれます。
当然、債務も相続人が引き継ぐ必要があります。
しかし、財産を処分しても借金を返済できない場合もあるでしょう。
民法では、このようなときに相続を放棄する手続きができます。

相続放棄を行うには、被相続人が死亡したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し出る必要があります。
これにより、始めから相続人ではなかったとみなされ、借金を継がなくても良くなります。

正当な取り分を要求する際の時効は1年

受け取った遺産が不当に少なく、遺産を譲り受けている第三者の受遺者がいるような場合は、正当な取り分をその人に請求することが可能です。
これを遺留分減殺請求と言います。
遺留分減殺請求権は第三者への贈与や遺贈などを知ったときから1年で時効となります。
もしも相続が不当だったという事実を知らなかった場合でも、10年経過すると時効となります。

相続税の時効は、知らなかった場合は5年、知っていた場合は7年

相続税は相続開始から10か月以内に申告しなくてはなりません。
その期限に間に合わないと、延滞税などの罰が科されます。
ところが、永遠にこの支払い義務が続くわけではありません。
一定期間払わないでいると、相続税の納付が免れます。

相続税の支払い義務を知らなかった場合は5年、知っていて故意に支払わなかった場合は7年で時効となります。
しかし、滞納に対する罰には大きなものがあります。
さらに、隠蔽や偽装を行うと重加算税が課され、高い割合の加算税が付加されます。

相続税の支払いから逃れたり、少なく申告したりしたままで済むことはほぼ不可能と言っていいでしょう。
国税局が資料から申告額が過少なものについて、実地調査を行うためです。
毎年、この調査によって3000億円以上の税金の申告漏れが発覚しています。
もちろん、これには悪意のないケースも相当に含まれています。

追徴税を課されると当然、本来の相続税よりも高くなりますので、相続税は正確に申告しましょう。

遺産分割請求権には時効がない

遺産分割の話し合いは長期に渡ることが予想されます。
もしも期限があると、納得のいく相続は難しいでしょうし、混乱を招きかねません。
そのため、遺産分割を他の相続人に請求する遺産分割請求権には時効がありません。

時期が来て、勝手に遺産が分割されたり、相続権が没収されたりすることはありません。
ただし、相続税の申告には期限があるため、協議はなるべく早く済ませたほうが良いでしょう。

相続手続きの期限一覧

  • 7日以内 死亡届の提出
  • 10日以内 老齢厚生年金受給の停止
  • 14日以内 厚生年金受給の停止
  • 14日以内 健康保険証の返還
  • 14日以内 世帯主変更の手続き
  • 3か月以内 限定承認・相続放棄
  • 4か月以内 準確定申告
  • 10か月以内 相続税の納税
  • 1年以内 遺留分の手続き
  • 3年以内 配偶者の相続税額の軽減
  • ※相続税申告期限に相続分割が間に合わず、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出していた場合
  • 3年以内 死亡保険金の請求期限

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