遺産分割したいが母が認知症の場合

高齢化社会に伴い、相続人となりうる人の中で、認知症にかかっているケースもあるのではないでしょうか。そして、母がもしそのような場合、遺産分割はどのようにすればいいのでしょうか。

認知症の人は、判断能力を欠いているため、法律行為である遺産分割を行うことはできません(知的障害や精神障害等も同様)。そのため、相続人に認知症の人がいる場合には、成年後見制度を活用することになります。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害・精神障害などによって自分の物事を判断する能力が不十分な人を保護するために設けられた制度です。

事理弁識能力を欠く人が単独で物事を判断・実行しようとすると、他人に利用され、その人の財産が本人の意思に関係なく処分されてしまったりする恐れがあり、自分にとって不利益な契約を判断できず、悪徳商法の被害にあう可能性も十分にあります。

そこで、これらの人をサポートする後見人を家庭裁判所が選定し、本人の代理等を行わせることで事理弁識能力を欠く人の支援と保護を図るのです。後見人には、同居の親族や弁護士、行政書士、司法書士、社会福祉士などの専門家が選定されることが多いようです。

事理弁識能力を欠く相続人がいる場合の手続き

相続人の中に認知症等で物事を理解・判断することができない相続人がいる場合は、以下のような必要な手続きをとります。

  • ①理弁識能力を欠く相続人に法定後見人をつけるため、家庭裁判所で「後見開始の審判」の手続きを行い後見人を選任してもらう
  • ②任された成年後見人が、事理弁識能力を欠く相続人の代理人となり、他の相続人との遺産分割協議に参加する
  • ③遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書を作成する。又、その内容に応じて必要な手続き(遺産の名義変更等。手続きに必要な署名等についても成年後見人が代理で行う)を取る。

※成年後見人は、事理弁識能力を欠く相続人が不利益にならないように、他の相続人と協議・調整をおこなっていきます。また、成年後見人となった人は遺産分割協議終了後も、成年後見人として財産の管理等の仕事を継続的に行っていかなければなりません。成年後見人を辞退できるのは、やむを得ない事情があると家庭裁判所が認めて許可した場合、又は後見を受ける人(事理弁識能力を欠く人)が死亡した場合に限られます。

成年後見人の選任と手続き

成年後見人の選任手続きは家庭裁判所に申立てを行いますが、その手続きはすぐ終わるというものではなく、数ヶ月から1年近くかかるといわれています。

成年後見人選任にかかる手続きの詳細は以下の通りです。

手続き先 事理弁識能力を欠く相続人の住所地の家庭裁判所
申立人 本人、配偶者、四親等内の親族など
費用 収入印紙800円、登記印紙4,000円、裁判所から書類を送付するときに必要な切手代※場合によっては鑑定料(5~15万円程度)が必要となる
必要書類 後見開始の申し立て書、申立人の戸籍謄本、本人の戸籍謄本・戸籍の附票、成年後見登記事項証明書、診断書、成年後見人候補者の戸籍謄本・住民票・身分証明書・成年後見登記事項証明書

※場合によって、これら以外にも書類を要求されることがあります。

実際の場面における注意点と配慮

相続人の中に事理弁識能力を欠く人がいる場合における注意点は、被後見人(後見を受ける人。事理弁識能力を欠く人)と後見人との利益が対立する場面です。

父・母・子の3人家族を具体例に、認知症の母の後見人に子が選ばれた場合、母と子はお互いに共同の相続人のためお互いの利益が衝突します。このような事態においては、認知症の母の権利を守るために特別代理人を選任する必要性があります。

そして、認知症等の人に相続させる財産については、今後の生活保障に大きく関わるため、現金・預金や定期的な収益を生む財産を優先的に分け与えた方がよいでしょう。

このような複雑なケースはとても個人で対応できるものではありません。法律のプロである専門家に相談することをお薦めします。

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