預金の使い込みが発覚したら不当利得返還請求の訴訟も視野に

年老いた両親と一緒に暮らしていて、親子で生活費を出し合っている場合、親に頼まれて銀行口座からお金を引き出すような状況は充分起こり得ることです。
もしそれが習慣化している場合、親が亡くなった後も親の口座から預金を下ろしてしまうかもしれません。

しかし、亡くなった両親の口座から勝手にお金を引き出すことは止めた方が良いでしょう。なぜなら相続は被相続人がなくなった時点で始まっているからです。

もしも知らずに行っていると、他の相続人から不当利得返還請求の訴訟をされることもあります。
知らなかったでは済まされない預金の使い込みを防ぐために、何が不当であるのかを見ていきましょう。

不当利得について

不当利得とは、本来利益を得るはずの者が損失し、そのかわりに別の者が利益を得ることです。
受益者は残っている分の利益を返還する義務を負っています。

もしもこの行為に悪意があった場合は、残っているものだけでなく、得た利益全てに利息を付けて返還する義務があります。

不当利得の例

不当利得には具体的にどのような事案があるのでしょうか。
たとえば、貸金業者が利息制限法の制限を超える利率の利息を請求し、消費者がそれを払った場合、この過払い金は不当利得となります。

ほかにも、返金可能と謳ったお店で買ったものを返そうとして返品したのにも関わらず、お金を返してくれなかった場合も不当利得となります。

不当利得の例の中には、被相続人の預金の使い込みも含まれています。
預金の使い込みとは、被相続人の預貯金を本人以外が勝手に引き出し、自分のお金として使用していることを指します。
この場合、不当と知らずに引き出した預金が残っていれば、返還する義務があります。

しかし、引き出したことの証拠がないと、訴訟に至ったとしても立証は難しいでしょう。

預金使い込みの種類

生前の預金の使い込み

家族であれば、銀行カードを渡され、ATMでお金の引き落としを頼まれるようなことはあるかもしれません。それ自体は違法ではありません。

定期的な少額の引き出しに関しては、口座名義人(被相続人)の生活費に充てたと推測できるため、不当利得ともみなされにくいとされています。このようなケースでは、返還請求を行うことは難しいでしょう。

しかし、預金引き出しが口座名義人の意思に反するときは話が変わってきます。
無断でお金を引き出した人に対し、口座名義人は不当行為による損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権を持っています。

死後の預金の使い込み

被相続人が死亡すると、その瞬間から財産は法定相続人の共有財産になります。
法定相続人が自分の相続分を超えてお金を引き出すと、横領とみなされます。
他の法定相続人は、それに対して損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権を持っています。

使い込んだ分を含んだ遺産分割を

被相続人が亡くなると、相続人は遺産の分割方法について話し合います。
これを遺産分割協議といいます。

被相続人の死後にお金を引き出すことは、相続分に手を付けていることになります。
そのため、引き出された預金額は遺産として足し戻して考える必要があります。
相続分を割り出す際はこの遺産の合計を分割します。

預金を引き出した者は、相続分と引き出した預金額の差額分をもらうことになります。

しかし、預金を無断で引き出していた者を詰問しても、簡単には事実を認めないでしょう。そのため、話し合いでは解決できない可能性は高いです。

不当利得返還請求を行う手順

話し合いをしても解決に繋がらなければ、家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行います。しかし、調停ではなかなか預金の勝手な使い込みと言った問題は解決しにくいのが現状です。

そこで、地方裁判所に不当利得返還請求の訴訟を提起します。手順は以下のようになります。

1.訴状の提出

原告が申立書類である訴状を作成し、地方裁判所に提出します。

2.裁判期日

訴状を確認した裁判所職員が被告と原告を同時刻に裁判所に呼び出します。
それぞれ話しを聞きます。

3.尋問

関係者本人を裁判所に召喚し、裁判官が直接話を聞きます。

4.裁判官の心証

裁判官が両者の主張を基に心証を形成します。
ここで和解が勧められることがあります。

5.判決期日

裁判官が判決文を作成し、公開法廷で判決を言い渡します。
判決によって認められれば、強制執行も可能です。

和解で裁判のコストを削減

預金の使い込みは多くの場合、証拠に乏しく、判決が難しい事案です。
親族間の紛争ですし、裁判官も和解の勧告をすることが多いです。

和解にはその後の審理過程にかかるコストを削減できるというメリットもあります。
使い込みがあったにせよ、親族として思いやりを持つことも忘れてはいけません。

使い込みが起きないように、事前にできること

預金の使い込みがおきてしまうと、調停・訴訟という多大な金銭的・時間的・精神的コストがかかります。
そうした一連の流れを経ても満足の行く結果にならないこともあります。

このような不必要な事案が発生しないように、事前に予防しておくことが望ましいです。預金の使い込みがおきないように、前もってできることをご紹介します。

銀行口座の凍結

被相続人の死亡時が相続の開始となりますので、本来であれば口座のある銀行に連絡する必要があります。
被相続人の死後もお金を引き出すことができるのは、死亡について銀行に知らせていない場合です。

しかし、そのままでは無断の引き出しのようなトラブルの種になりかねません。
銀行に死亡を知らせ、相続のプロセスに移ることで、銀行口座からはお金が引き出せなくなります。

成年後見制度を利用

成年後見制度はすでに判断力が低下した人や今後のことが心配な人に対して、法的に後見人を立てる制度です。
後見人は本人の代理で法律行為を行うことができます。
親族や弁護士、司法書士が後見人に選ばれます。

安全な財産管理と本人の補助を行えるメリットがありますので、トラブルの予防策になります。

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