相続人でない人に財産を与えたい場合は遺言書で遺贈を

相続は遺言書がないと、遺された家族間の争いを生むことがあります。
被相続人の意志が分からないため、法律に則って配分されてしまいます。
お世話になった人には何も遺せない一方で、疎遠であったり不仲であったりした家族には財産が渡ります。
遺したい人に財産を遺すため、遺言書はぜひとも遺しておくべきだと言えます。

遺言のメリットと、相続人以外にも財産を残せる遺贈について説明いたします。

なぜ日本人は遺言書をあまり書かないと言われるのか

欧米では、遺言書を書くことは日本よりも一般的です。
一方、日本では、相続において遺言書があるのは一握りのケースです。

遺言書がこれほどまでに書かれないのは、文化的な背景があると考えられます。
日本では、被相続人が見たときにどう思うかという配慮をしてしまいがちなのではないでしょうか。

誰しもが遺言書の内容によって、えこひいきをしているとは思われたくないものです。
寄与分が遺言に書かれていなかったことで傷付く人もいるのかも知れません。

遺言を書かないことで、遺族の誰かに悪く思われたり、誰かをがっかりさせたりすることは避けられるでしょう。
しかし、遺言状を書くにはそれ以上のメリットがあります。

遺言書を書くメリット

日本では書かれることが少ない遺言書ですが、遺しておくことには利点があります。
それは次の2つです。

遺言の利点1 思い通りに財産の処分ができる

財産は生きているうちは所有者のものです。
所有者は生きている間は収入や資産運用によって、財産を増やしたり維持したりするものです。

もしも遺言をしなければ、相続人同士の協議でどのように分配されるかは分かりません。
被相続人が全く望んでいなかったような形態になる可能性もあります。
そこで、財産所有者として最後まで責任をもって遺言をすることが家族にとっては望ましいことです。

また、遺言をすれば法定相続人以外の他人や胎児の孫などにも財産を遺せるというメリットもあります。

遺言の利点2 死後の紛争を避けることができる

遺言で相続に関することを明示しておくことによって、相続人同士の紛争を避けることができます。
認知している婚外子(隠し子)、借金などは後で発覚するとトラブルの元になりますので、明確にしておきましょう。

こんなときは遺言を

  • 自分の死後、遺言によって認知をしたい場合
  • 借金が多く、相続人に不利益を与えるおそれがある場合
  • 親不孝な子供に遺産を相続させたくない場合
  • 農地を長男1人に全て相続させたい場合
  • 遺贈をしたい場合

遺言書を作るときは遺留分に注意

遺言によって被相続人が意思を書き留めることで、ある程度、相続は決まります。
しかし、それでは家族以外に全財産が渡り、法定相続人に何も遺されないような状況も起こり得ます。

そこで、法定相続人に遺産が少しでも確保されるよう、遺留分という制度があります。

遺留分は法定相続人が最低限相続できる遺産の割合のことで、被相続人の配偶者、子(代襲の場合は孫)、父母が請求することができます。

遺留分の割合

遺留分は法定相続分と同じく、同じ相続順位の者が複数いる場合は分け合うことになります。
たとえば、子が2人兄弟の場合は財産の1/4を2人で分け合うため、1/8ずつが遺留分です。

  • 配偶者のみの場合の遺留分
  • 配偶者:1/2

  • 第一順位の相続の場合の遺留分
  • 配偶者:1/4
    子:1/4

  • 第二順位の相続の場合の遺留分
  • 配偶者:1/3
    父母:1/6

遺留分に満たない場合は遺留分減殺請求を

もらった財産が自分の遺留分に満たない場合、遺留分を侵害している他の相続人や受遺者に対して請求することができます。
これを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)と言います。
相続の開始と減殺すべき贈与・遺贈があってから1年で時効となります。

遺留分減殺請求には、話し合いと裁判での決着という2通りの方法があります。
相手方と話し合って解決できる場合は良いですが、それが難しい場合は相手方に遺留分減殺請求書を送ります。

裁判手続きとしては、家庭裁判所での調停と民事訴訟という手段があります。

相続人でない人に財産を遺したい場合は遺贈ができます

遺言では相続人への財産分与を規定する以外に、相続人でない人に財産を与えることもできます。この自分の財産を特定の人に無償で与えることを遺贈と言います。
遺贈を行うことで法定相続人はもちろん、内縁関係の妻、息子の嫁などの相続人以外の人や会社、学校などの法人にも寄付をすることができます。

遺贈を受ける人のことを受遺者といいます。
受遺者の承諾なく遺贈を行うことはできますが、受遺者はこれを放棄することもできます。

どのような内容の遺贈を行うかは被相続人の自由です。
ただし、他の場合と同じく、遺留分が考慮されていない場合、相続人たちから遺留分減殺請求を受けることもあります。
これを遺留分減殺請求といいます。

遺贈のケース1 内縁の妻に財産を遺す

内縁の妻には相続権がありませんので、そのままでは財産を遺すことができません。
もしも内縁の妻に財産を遺すのであれば、遺言状で遺贈する旨を明記しておくか、生前贈与することになります。このとき、相続人の遺留分を侵害してしまうと、減殺請求を受けることがあるため、注意しましょう。

遺贈のケース2 寄与行為をした人に財産を遺す

子供や配偶者が父親の介護や生活の世話を付きっきりでしていた場合、その行いは寄与行為に当たります。
被相続人が介護ヘルパーを雇う代わりとなったことで、財産の増加に寄与したと考えられるためです。

しかし、民法の規定するところでは、寄与分は相続人にのみ認められています。
亡き息子の嫁などが介護に専従したとしても、それは寄与行為とはみなされません。
そこで、寄与者に遺言によって遺贈をするか、生前贈与をすることで財産を遺すことができます。

包括遺贈では債務も遺贈となります

遺贈の仕方には2通りあります。

財産の全部またはそのうちの何割かを譲渡することを包括遺贈と言います。
借金の割合まで負担しなくてはいけません。

一方で、住所を指定するなどの方法で特定の財産を指定して譲渡することを特定遺贈と言います。
特定の財産のみの遺贈ですので、債務を遺贈されていない限り、借金を負担することはありません。

財産の無償の贈与とはいっても、債務がある場合もありますので、注意しましょう。

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