【生前に作成する遺言の知識】法的に認められる遺言書と無効の遺言書がある。

遺言書ならなんでもOK?法的に認められる遺言書と無効の遺言書

年々増加する公正証書遺言の作成件数

2011年に作成された「公正証書遺言」の数は78,754件。

2013年には96,020件まで跳ね上がり、2年で17,266件の増加。1995年の作成件数は46,301件。18年でおよそ2.1倍です。

データを見るだけでも、“遺言書への認識”が高まっていることに気づきます。

ここでも遺言書の書き方と必要性というものがよく理解できます。

【参考】日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

生前に遺言書を作成する目的は人それぞれですが、特に目立つ理由が『相続争い』の防止です。
法定相続人にとって遺産相続は大きな問題で、広げられる親族間の争いは、テレビやドラマだけの話ではありません。

大きなトラブルに発展し、裁判沙汰になることも珍しくありません。

また、公正証書遺言の作成件数が増えている背景には、遺言書をめぐるトラブルの増加も理由の一つ。
良かれと思って書き留めた遺言書。しかし、遺言書そのものが相続争いの種になることも。

【参考】遺言書のトラブル
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20090702-01/1.htm

「その遺言書は本当に故人が記したものなのか?」
「実は、第三者が勝手に作った遺言書ではないか?」

遺言書であれば何でも良いというわけではなく、「証明力」と「執行力」が備わった遺言書であることが重要です。

それらの条件をクリアする遺言書が公正証書遺言となります。


遺言書の種類

遺言書として認められる形式は3種類。
「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」、それ以外の遺言書は無効です。

遺言書の内容が執行されるタイミングは財産を所有する本人が亡くなった時。
その際、公正証書遺言だけが直ちに遺産相続の手続きを執行できます。
それ以外の遺言書は裁判所での「検認」が必要になり、速やかに遺産相続を始めることができません。

※検認・・・遺言書が正式であるかを裁判所が判定する手続き

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言書の中で最も証明力と執行力に優れた形式(民法969条)。

遺言書の原本を公証役場が管理するため、法的な効力をもつ書類が公正証書遺言です。
改変や変造の疑いもなく、法的に認められた遺言書として扱われます。
裁判所の検認が不要で、遺言書の内容に従い速やかに遺産分割を「執行」する力があります。

【公正証書遺言の特徴】

  • 公証役場(公証人)が遺言書を作成する
  • 2人の保証人が必要。公証役場への同行が必要
  • 公証役場に手数料を支払う ※遺産の額に応じて変動
  • 原本を公証役場が管理。控えを本人が保管
  • 住民票と身分証、実印と印鑑証明が必要
  • 遺言書を執行する際には、裁判所の検認が不要
  • 直ちに遺言を執行する効力がある
  • 改変や変造の疑いがない

自筆証書遺言

故人が自筆で記した遺言書。
そもそも、故人以外の第三者が作成した遺言書は無効です。
また、代筆のほかにもワープロやパソコンでの作成も無効(民法968条)。
ただし、秘密証書遺言に限っては“正当な理由がある場合のみ”代筆が認められます。

公正証書遺言とは異なり、いつでも手軽に作成できる手軽さが自筆証書遺言のメリットですが、裁判所の検認が必要になるため証書力と執行力に欠けます。

【自筆証書遺言の特徴】

  • 自筆で作成すること。代筆・ワープロ・パソコンなどでの作成はNG
  • 作成日の記述は必須。年月日の記述が条件
  • 自筆の署名と捺印は必須
  • 修正液や二重線、塗りつぶしなどの訂正はNG(民法968条-2)
  • 原本を本人が管理する。または、第三者が保管する
  • 遺言書を執行する際には、裁判所の検認が必要
  • 直ちに遺言を執行する効力が無い
  • 改変や変造される可能性がある

自筆証書遺言の注意点は、あいまいな表現、理解できない文面が確認された場合、裁判所の検認で遺言書が無効となってしまうおそれがあります。(民法1004条-自筆証書遺言の検認)

秘密証書遺言

自筆証書遺言を本人が公証役場へ持参し、その日時を公証人が記録します。
そうすることで、自筆証書遺言が秘密証書遺言へと形式を変えます。

自筆証書遺言を持参するときには、2人以上の証人を連れていくことが条件。
あとの条件は ほぼ自筆証書遺言と同じで、遺言を執行する際には裁判所での検認が必要となります。

自筆証書遺言との違いは、遺言書の存在を明らかにしていること。
法的な機関に提出していない自筆証書遺言は、存在そのものが不明確です。

公証役場に記録してもらうことが“遺言書の存在を示す証拠づくり”になるわけです。

【秘密証書遺言の特徴】

  • 自筆で作成すること。ただし、正当な理由がある場合は代筆でもOK
  • 公証役場に自筆証書遺言を持参し、その日時を記録してもらう
  • 2人の保証人が必要。公証役場への同行が必要
  • 作成日の記述は必須。年月日の記述が条件
  • 自筆の署名と捺印は必須
  • 修正液や二重線、塗りつぶしなどの訂正はNG(民法968条-2)
  • 原本を本人が管理する。または、第三者が保管する
  • 遺言書を執行する際には、裁判所の検認が必要
  • 直ちに遺言を執行する効力が無い
  • 改変や変造される可能性がある

遺言書の検認について

公正証書遺言は裁判所の検認が不要なので問題ありませんが、執行力と証明力に欠ける自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合、裁判所の検認が必要になることを見越して“封筒への工夫”がオススメです。

まずは、作成した遺言書を封筒に入れ、印鑑で「封印」します。
そのあと、封筒の正面に「遺言書」と記し、裏に作成日と署名・捺印。
表に「開封するな。家庭裁判所へ提出し、検認すること」と注意書きして保管しましょう。

意外と知られていない“遺言書の検認”。
相続人が速やかに手続きできるよう工夫しておく気遣いが大切です。

そういったことを色々ふまえると、やはり公正証書遺言が“一番確実な遺言書の残し方”として安心かもしれません。

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