親が死ぬと兄弟姉妹が不仲になる4つの問題

brothers quarrel

親が元気でいるときは仲が良かった兄弟姉妹が、親が死んだのと同時に関係が悪くなるというのは実際によくあります。親が死んだ後、兄弟姉妹が不仲になる一番の原因は遺産相続をめぐる問題です。

特に、「少額遺産」、「遺産が不動産」、「生前介護」、「葬儀費用」という4つの問題を巡ってトラブルが勃発するケースが見られます。

兄弟・姉妹が不仲になるケース1【少額の相続財産】

遺産相続によるトラブルと聞くと、資産家だけの問題だと思われる方が多いかもしれません。しかし、平成25年度にとられた司法統計(家庭裁判所における遺産分割による遺産価額別)によると、なんと1000万円以下の相続で全体の約32%。5000万円以下になると約42%。合わせると、相続争い全体の約74%が5000万円以下の小額規模でおこなわれているのです。

このように少額の遺産でも相続トラブルが増えた背景には、「家督相続から均分相続の時代へ」変わりつつあることが挙げられます。かつては親と同居する長男が資産を相続する「家督相続」が当たり前でしたが、最近では民法で定められた法廷相続通りに兄弟で相続を分け合う「均分相続」が普通になっています。

その場合、財産が多いケースでは早い段階から弁護士などに相談したり事前に準備ができます。また、財産が多いと分配もしやすいため問題が起こりにくくなります。

しかし、財産が少ない場合には親が死ん後に相続の手続きを開始するケースが多く、遺言も残されてなかったりします。そうなると相続人の間で降って湧いた遺産を巡って激しく主張するようになり、少額の遺産を巡って兄弟姉妹が泥沼の相続争いが起きることになります。

兄弟・姉妹が不仲になるケース2【遺産が不動産】

遺産を巡るトラブルで多いのが、親の遺産が貯金や有価証券などの金融資産ではなく、「土地付き一戸建て住宅」などの不動産がある場合です。その際には、親が亡くなった後にその家に住む人がいなければ、単純に売却しそのお金を兄弟姉妹で分ければ済みます。

しかし、親と同居していた兄弟姉妹がいる場合はそうも行きません。今現在住んでいる家を簡単に売却・処分することに納得する人はいないでしょう。そのため、どのように遺産分配するかで遺産分割協議の際に難航するケースがみられます。

このような時に紛争を避けるためには、たとえば長男がその家を相続し、他の兄弟姉妹に相続分を金銭で支払う「代償分割」か、遺産となる住宅と土地を兄弟姉妹で共同所有する「共有分割」が一般的に取られます。

これも相続人全員が話し合いで納得するのは難しく、弁護士が間に入って権利調整しないと解決しにくい問題と言えます。

兄弟・姉妹が不仲になるケース3【親の介護】

兄弟姉妹のうち1人が親の介護を重点的にしていた場合も不仲になる原因になります。親の介護は介護する側にとっては時間・エネルギーを使って自己犠牲のもとにおこなわれます。

親が生きている間は兄弟姉妹に対して不満があっても我慢できますが、親が亡くなったあとにこれまでの苦労に対して対価を求めたいという感情になります。そのため、遺産相続では介護したという貢献度を主張する人が多く見られます。

親のために特別な貢献をした相続人がいた場合、その事情を考慮してほかの相続人よりも相続分について考慮するという考え方が民法にはあります。貢献した度合いを「寄与度」といい、貢献(寄与)したことによって相続分にプラスする分を「寄与分」と呼んでいます。

そこで兄弟姉妹の中に親が死ぬまで介護していた人がいれば、寄与度によって遺産相続額が加算されることになります。

しかし寄与分には、介護報酬のような金銭相場はありません。金額は民法にも規定されていないため、寄与度とその金額が争点となって兄弟姉妹が不仲になる原因となるわけです。

兄弟・姉妹が不仲になるケース4【葬儀費用】

親が亡くなるとまずは葬儀の準備に入りますが、この葬儀が後々の遺産相続のトラブルの引き金となることがよくあります。

親が死んだとき、葬儀費用は誰が負担するのでしょうか。通常は喪主となる配偶者や長男が負担することになりますが、配偶者も死んでいたら長男が負担することが一般的です。

最終的には兄弟姉妹間の話し合いで、葬儀費用を折半にすることは珍しくありません。しかしその話し合いをせずに、「葬式が終わってから急に、長男から葬儀代の一部を請求された」ということもままあります。

その場合、「折半にするなら葬儀前に相談して欲しかった…」「折半にするなら葬儀社や葬儀方法にもっと口出ししたのに…」といったしこりが残り、兄弟姉妹間が不仲になる原因になることもあります。

まとめ

何十年も仲が良かったのに、親が死んだと同時に兄弟姉妹の仲が悪くなるのは悲しいことです。親がいなくなった後こそ、兄弟姉妹が仲良く結束していくにこしたことはありません。

そこで重要なのが生前対策です。兄弟姉妹が不仲にならないためには親が死んだ後のことは親が生きているうちに取り決めておくことです。まずは親と遺産の話をして遺産額や品目の把握をした後、親の介護の寄与分や親の葬儀費用の負担方法などをきっちりと話し合うべきでしょう。

あまり気乗りはしない話だと思いますが、親のためにも、自分のためにも、さらには兄弟姉妹のためにも、遺産の問題は避けては通れない問題です。

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