どろどろの遺産相続争い!?これを見ると遺言書の大切さが分かる

どろどろの遺産相続争い!?これを見ると遺言書の大切さが分かる
遺産相続争いや遺言書と聞いて、皆さんは何を連想されますか?
探偵・金田一耕助でお馴染みの「犬神家の一族」でしょうか。それとも火曜サスペンス劇場?

どちらにしても、物語やドラマの世界の事だと思っていませんか?

また、現実にあるとしても、莫大な財産を持つほんの一部の資産家で起こる問題だと考えていませんか?平凡な家庭の自分には関係ない、と。

それは、大きな間違いです。

遺産相続に関する争いは、とても身近な問題なのです。資産の多少は関係ありません。
そして、相続を円滑に進めるために、遺言書はとても重要な存在です。

薄れゆく家長制の風潮

一昔前の日本では、「家長制」という考え方はごく自然な事でした。

ある年代から上の方々にとっては当たり前の事でしょう。
また、若い世代でも、生活の環境によってそうした風習を抵抗無く受け入れている方もいると思います。

しかし、現代社会においてそうした風潮が薄れてきている事も事実なのです。

相続争いの具体的な例

一例を具体的にご紹介しましょう。

高齢になり夫も亡くして、長男に面倒を見てもらっていた母親がいます。
ある時、息子達全員を集めてこのような事を言い含めました。

「遺産のうち現金は全て面倒を見てくれた長男に譲る。その他は3等分すれば良い」

家長制の考え方はもちろんですが、年老いた自分の面倒を見てくれていた長男に対する感謝の気持ちもありました。
長男以外の息子達も、反論はしませんでした。

その後、母親は亡くなりますが、特に遺言書などは残していませんでした。
息子達の事を信頼していたからです。ちゃんと直接伝えたのだから、兄を立てて、兄弟でまとまっていってくれると。

ところが、実際に遺産を相続する時になって、弟の一人が言いました。

「遺産は法律で決まっている通りに3等分してもらう。自分は母親の面倒は一切みなかった。だけど今は家長だとか、そんな時代じゃないんだよ。」

母親が諾した想いも空しく、遺産分割協議は揉めに揉めて、兄弟の間に溝ができてしまいました。

実は、こうした事は珍しくありません。
兄弟や親戚の間で争うなんて、とても哀しい事です。けれど、残念ながらこのような事例は後を絶たないのです。

遺言書の重要性と効果

ではもし、先ほどの一例のような状況で、母親が兄弟の前で宣言した事をきちんとした遺言書で残していたとしたら、どうだったでしょうか。

その場合、長男以外の息子達がそれに納得すればもちろん遺言書の通りになります。納得しなくても、遺言書が適正である限り内容が覆ることもありません。

ただし、2人の息子達は自分達が得るはずだった財産の一部を取り戻すことはできます。
これは、相続が相続人の生活保障の意義を持っている点などを考慮して、法律で認められている権利です。

遺言書が適正なものであっても、この権利を退けることはできないのです。

計算例

具体的に計算してみましょう。

夫がすでに亡くなり息子が3人であれば、法律で定められた相続財産の配分は、現金を含めてきっちり3等分です。
長男に現金を全て譲るという遺言に対し、残りの2人が権利を取り戻す手続きを取ると、元々の3分の1の半分である6分の1の割合で分配されることになります。

つまり、現金については3分の2を長男が相続できることになるのです。
全ては無理でも、長男に少しでも多く遺産を譲りたいという希望は叶うのです。

また、遺言書を残す際、遺言執行者という役割を指定することもできます。
遺言執行者とは、相続財産を管理して遺言書の内容を適正に実現する人のことです。遺言をきちんと執行するための責任者ということになります。

ですから、遺言書の内容に争うような要素が無かったとしても、信頼できる人物を遺言執行者に指定しておくことで、より円滑な相続処理が期待できるのです。

いかがでしょう。
適切で円滑な遺産分割のために遺言書がいかに重要で、また効力が大きいか、感じて頂けたでしょうか。

遺言書の種類

さて、遺言書と聞くと専門の用紙が必要であるとか、何か特別なもののような印象を持たれる方もいるかもしれません。
確かに、遺言書の書き方は法律で定められた決まりがあります。適正に書かなければ効力はありません。

作成する場合には、弁護士など法律の専門家に相談する方が確実でしょう。

自筆証書遺言

実際には決まりさえきちんと守っていれば、いつでも自分で書くことができます。どんな紙に書いてもかまわないのです。

これを自筆証書遺言と言います。
お金もほとんどかかりませんし、一番簡単に残せる遺言書です。

公正証書遺言

自分が亡くなった後に公開されるものですから、管理をきっちりしておかないと紛失や破損の恐れもあります。そして、こういう心配はしたくないかもしれませんが、内容によっては改ざんや破棄の可能性も無いとは言えません。

そのためにより確実に、そしてより安全に遺言書を残すために、公証役場という公的な機関を利用する事が勧められるのです。

この、公証役場で専門家である公証人に作成してもらう遺言書が公正証書遺言です。

名前だけは聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

手数料や証人が必要となりますが、最も安全かつ確実に遺言書が残せます。

秘密証書遺言

自分で作成した遺言書を公証役場に提出して、遺言書の存在をしっかり証明してもらう秘密証書遺言という制度もあります。こちらも費用と証人が必要です。
これは、公証人が内容を確認しないので、自分で作成した遺言がちゃんと適正に書かれている事が前提となります。

ただ、公証役場に提出する遺言について、署名だけは自筆である必要がありますが、自筆証書遺言と違って、本文はパソコンなどで作成したものでも構いません。

まとめ

遺言書を残すということは、特別なことではありません。
自分の残した財産を、望む形で次の世代に託すための大切な手段なのです。

わざわざ遺言書を残す必要なんて・・・と消極的にならず、一度、遺言書を書くつもりで、相続の事を改めて考えてみてください。

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