ネルソン・マンデラの遺言。「争続」を避けるための見本となる遺言書の残し方

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親が亡くなった後に必ず持ち上がってくる相続問題ですが、遺言書の有る無しによって残された家族は、その後の生活や人間関係に大きく影響を受けます。最後の責任として、生前から遺言書を残しておく事が重要です。

マンデラの遺言書

ネルソン・マンデラ(大統領)が亡くなって2ヶ月後の2014年2月に遺言書が公開されました。遺産総額は推定4億6,000万円。遺産の行方を記した遺言書は22ページにわたり、細かく遺産分割の内容が示されていたとのことです。


家族をはじめ、マンデラ家で働く家事使用人や料理人、通っていた学校に遺産の一部を分配するよう記録した内容でした。実に、心配りが行き届いた遺言書でした。

こうも細かく遺産の使い道が記されていると、さすがに文句を言う輩(やから)はいないはず。遺言書の重要性を証明した“遺言書の存在意義”と言えます。マンデラ氏の遺言書公開は、“この世を去る者の責任”を示した「最後の言葉」、そう感じさせる行いでした。

【参考】マンデラの遺書公開 元妻ウィニーへは一銭も残さず BLOGOS
htttp://blogos.com/article/79605

マンデラ氏に限ったことではなく、遺産を託す者として遺言書の作成は生前の大切な行い。
相続争い=争続を未然に防ぐためにも、遺言書を残すことは“この世を去る者”に課せられた重要な使命と言えそうです。

争続が予想されるケース

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相続人の一人が財産権を主張する

欲張った自己主張で多くの取り分を望むケース。
遺言書で指示があるにも関わらず、相続権を主張して話し合いがスムーズに終わらない展開です。遺言書を残し、細かく指示することで、余計な問題を回避する必要があります。

親族同士の仲が悪い

亡くなった方が夫の妻と夫の兄弟姉妹が不仲であるケースなど、争続に発展しやすい傾向が。被相続人(亡くなった夫)の子供と妻は第一順位の法定相続人になり、取り分の少なさを良く思わない被相続人の兄弟姉妹が争う展開です。

遺産の内訳が不透明

遺産の分配で、取り分の少なさを主張する相続人がいる場合、確実に話し合いは長引きます。
また、“どれだけの遺産が在るのか”を生前に明らかにしていないケースも、遺産分割協議でもつれる展開に。

遺言書で遺産の内容と分配の内訳を明示し、それが「法的な効力」をもった遺言書であることが何よりも重要です。

遺言書の“偽物説”が浮上する

遺言書の存在そのものが争続の種になることも。
「その遺言書は本物か?」と、偽物説が浮上するケースも珍しくありません。

争続のトラブルがもとで遺産分割協議へと発展したケースは、平成22年で13,000件以上。調停(裁判)で協議するとなれば解決まで1年以上の期間が必要になり、精神的にも苦痛が伴います。

例えば、遺言書の偽物説。
生前に「公正証書遺言」など法的に認められる遺言書を作成し、トラブルの種を少なくしておけば争続へ発展する可能性も低くなるでしょう。

遺言書が必要になるケース

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会社を相続させたい

後継者を遺言書で指示していないケースでの争続。後継者にしたい人物がいれば遺言書で明示する必要があります。後継者が親族に限らず、会社の従業員に跡を継がせたいケースも珍しくなく、そのような場合は遺言書の内容が決定を左右します。

個人事業を相続させる

個人事業の場合、法人とは異なり“事業そのもの”が個人の財産。設備から売上、預金などすべてが遺産となります。相続を話し合う際、遺産分割の対象になります。

事業そのものを特定の人物に継がせたい場合、遺言書で明示しておかなければ“事業そのもの”の存続すら危うくなるのです。「事業の後継者」と「事業に関わる必要な財産を後継者に相続させる」ことを明確に記しましょう。

遺産に現預金は無い。家と土地だけの場合

遺産が家と土地だけの場合、売却後に現金化してから分配するケースも。亡くなった方が独り身なら問題ないでしょうが、妻や子供がいる場合には問題です。住むところを失います。

とはいっても、ほかの相続人は納得しないでしょう。住処を守りたい配偶者と遺産を分割したい相続人が対立し、争続になることが考えられます。遺言書に「家や土地の相続人を配偶者や子供に指定」することでトラブルを避けられます。

そのほかのケース

  • 法定相続人がいない
  • 遺産を与えたくない相続人がいる
  • 配偶者に全ての遺産を相続させたい
  • 遺産を与えたい人物が内縁の妻
  • 養子に遺産を相続させたい
  • 認知していない子供に相続させたい
  • 法定相続人以外に財産を相続させたい

遺言書は遺族や相続人への心配り

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遺言書は、単に遺産の分割だけが目的ではなく、“願いや想いを相続人に託すため”の手段でもあります。その一部に、争続を防ぐための生前対策として意味をもちます。また、遺言書は、遺産を受け継いだ相続人が「相続の手続きや処理」をスムーズに終わらせるための配慮です。

財産目録の手間が省ける

遺産分割協議では「財産目録」を作るために「相続財産調査」が必要になり、手間や時間がかかると遺産分割が長引きます。

遺言書に遺産の内容を細かく記しておけば、手間をかけることなく財産目録が作成でき、スムーズに遺産分割を終わらせることが可能です。

相続税の節税対策も期待できる

相続税の納付は、相続を開始してから10ヶ月後に申告。配偶者控除や基礎控除といった特別な措置を受けるためには、この期間内が申告期限です。

しかし、話し合いが長引き争続になると、10ヶ月を超えてしまうケースがほとんど。

相続税の控除や特別な措置を受けるには、なるべく早い段階で相続を終わらせる必要があります。無駄な争続を避け、早い段階で手続きを終わらせることで、相続税の節税につながります。

最後の責任

いつ、自分の身に起こるか知るすべのない「死」という問題。
残された家族のことを考えると、遺言書というものは軽視できません。

普段は仲の良い親族同士でも、いざ目の前に遺産が置かれた状況になると思いもよらぬ争いへと発展するケースもあります。残された家族が相続争いをおこない家族が崩壊する事だってあります。

争続を避けるための最善策として、遺言書の存在意義をあらためて考えてみませんか?

生前に遺言書を作成することが、残された遺族への“最後の責任”と言えるのではないでしょうか。

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