遺産を社会に役立てたい!遺産を寄付するときの注意点まとめ
子供に遺産を渡したくない。遺産を寄付する人が密かに増加中
近年になって、自分の遺産を配偶者や子供といった法定相続人(いわゆる家族)だけにではなく、自分の卒業した母校やボランティア団体に寄付する人が増えています。
遺産を寄付するというのは、個人主義の欧米諸国では昔から根付いていた文化です。
それに比べて、日本の文化は「江戸時代から、何代続く名家」といった家系を重んじ、築き上げた財産は直系の親族に引き継いでいくのが基本でした。
したがって、遺産を親族以外に寄付するなどというのは、文化的にあり得ない行為ですが、そうした家族制度が実質消滅しつつある現代では、日本でも遺産を社会貢献のために寄付したいと考える人が増えているわけです。
遺産を寄付するメリットとデメリットは
遺産を寄付することを「遺贈」あるいは、「死因贈与」と言います。
この二つの違いは、
- 遺贈:遺言書で明らかになる相続
- 死因贈与:被相続人(遺産を残す人)が、死んだら贈与するということが、生前に取り決められている相続
ということになります。
共通しているメリットは、生きている間に贈与をすると、最大50%の贈与税が掛かってしまいますが、遺産として相続してもらうと、相続税はそれより安くなるという点です。
遺贈は、法定相続人以外の誰でも指定できるという、被相続人にとって大きなメリットがあります。
昔世話になった人や団体、あるいは社会貢献を目的にしたボランティア団体など、個人や法人を問わず、被相続人の遺産を誰にでも相続させる事ができるわけです。
反面遺贈のデメリットは、遺贈を申し受けた側が財産を不要だと思った場合、権利を放棄してしまう可能性があり、その場合は被相続人の遺志は果たせません。
そして何より、遺贈は遺言が公開されて初めて、その内容が知らされるので、法定相続人が激怒して大きな揉め事に発展する可能性が高いことでしょう。
一方、死因贈与は被相続人が生きているうちから、遺産を受け取る側にその遺志を伝えて契約するする事です。
ですから、そのメリットは遺産の相続が確実に行われることになります。またデメリットに関しては、財産が不動産であった場合、不動産所得税がかかってしまうことです。
しかし、死因贈与の場合、それ以外に大きなデメリットはありません。
また、前述のとおり遺産の寄付は相続税の節税になります。他にも相続税の節税方法はあります。詳しくはこちらをご参照下さい。
寄付するなら死因贈与。その方法とは
自分の遺産を寄付したい場合、問題の少ない方法は死因贈与です。その具体的な方法は、送る相手によって違ってきます。
個人に贈るのであれば、弁護士など専門家に依頼して、必要な書類を取り交わしておくのが一般的でしょう。
また団体の場合は、組織ごとに遺産寄付プログラムがあります。ボランティア団体として有名な『ユニセフ』や『あしなが育英会』などは、ネットで検索すれば、その方法を解説しています。
ただし、これらの産寄付プログラムの多くは、遺贈をされても断る傾向にありますので、死因贈与として話を進めましょう。
まとめ~死後揉め事にならないような相続を考えよう~
財産は被相続人の所有物であり、だれに相続させるかは被相続人の遺志が尊重されます。
しかし、「全財産を宗教法人○○に譲る」といった遺言を書き残しても、その遺志が100%通る事はありません。
被相続人に法定相続人(配偶者や子供などの親族)がいる場合、「遺留分」という遺産を相続する権利が民法で決められています。
したがって被相続人が遺留分を無視して、勝手な遺産分配をすると、遺産を相続する相手と法廷相続人たちの間で、ドロ沼の揉め事が発生してしまう事は当然です。
遺産を寄付するという事は、法定相続人たちにとって、何のメリットもない行為だという事をよく理解しましょう。
そして生前によく話し合って彼らの合意を得た上で寄付をするべきで、合意が得られそうもなのであれば、多少税金はお高めですが生前に寄付したいだけ寄付した方がいいでしょう。