話題になったエンディングノートと遺言書は違うもの!?使い分け方の解説
「終活」という言葉が世間的に広まっている中、2012年に41歳の若さで亡くなった流通ジャーナリストの金子哲雄さんの葬儀の事を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
生前に、葬儀の段取りを始めとする自分の死後をもプロデュースし、奥様に託していた金子さん。
奥様によれば、金子さんが残したものはいわゆるエンディングノートとは違うものでしたが、多くの人が関心を持つきっかけとなりました。
では、エンディングノートとは一体どういったものなのでしょうか。
エンディングノートとは
エンディングノートとは、人生の最後の時期を迎えるにあたっての自分の想いから、残される家族へのメッセージ、自分のお墓や葬儀に関する希望など、伝えておきたい大切なことをまとめて記しておくノートのことです。
決まった形式やルールなどはなく、内容も自由に書くことができます。日頃から日記をつけている方の中には、その延長でそうとは意識せずに書いている方もいるかもしれません。
また、インターネット上には重要な項目が簡単に整理できる書式やシートのようなものも公開されています。
エンディングノートは、型にはまらないこれまでの人生の記録、そして、自分が亡くなった時の事に対する備忘録のようなものです。
エンディングノートと遺言書の違いは
自分の葬儀の事や、家族に伝えておくことなどを記すエンディングノートについて、遺言書と似たイメージがあるかもしれません。
しかし、エンディングノートと遺言書には決定的な違いがあります。それは法的拘束力を持つかどうか、ということです。
これはとても重要で、注意しなければならない点です。
エンディングノートに、法的拘束力はありません。
遺言書は、書き方や内容についての決まりごとが法律できちんと定められており、決まり通りに書かれていることで、法的拘束力を持つ書類になります。
遺産の分配方法など相続に関する具体的な希望がある場合は、きちんとした遺言書として残しておくべきです。
ただし1つ注意が必要なのは、適正な遺言書に書かれた事であっても100%その通りになるとは限らないはという点です。
例えば、複数いる相続人の中で特定の1人だけに全財産を譲りたい、また社会福祉団体など相続人ではない者に全額寄付したい、というように相続人の本来の権利を侵害してしまうような遺言書を書くとします。
その場合、その相続人が侵害された権利の一部を取り戻す請求(遺留分減殺請求)をすることが可能となっています。
残される側が納得できないかもしれないと自覚するような内容であれば、相応の覚悟を持って遺言書を残してください。
エンディングノートの役割とは
遺言書のように法的拘束力はないエンディングノートですが、自分の意思を残すという事は大切なことです。いきなり遺言書のようなしっかりしたものを書くことが難しいと感じる方もいるでしょう。
しかし、エンディングノートであれば、家族に対して何をどう遺したいのかという事を、気負わず自由に書いて整理しておくことができるのです。
その上で遺言書を完成させることができれば、より納得できる内容のものが書けるのではないでしょうか。
そして何より、遺言書には書ききれない想いや気持ちを形として残せるのがエンディングノートです。もしも遺言書を残せなかった場合には、故人の想いを知る大切な証そのものとなるのです。
エンディングノートと遺言書の使い分け方
遺言書を残すことで具体的な遺産の分配方法などを「法」に託し、エンディングノートには、そのような遺言書を書いた背景や家族への想い、遺言書には書けない願いなどを記して「情」に託す。
たとえ法的拘束力がなくても、自由に書けるものだからこその役割があるのです。
エンディングノートを託されたら
では、そんなエンディングノートを残された側は、どう受けとめれば良いでしょうか。
すでに述べているように、エンディングノートには遺言書と違って法的拘束力はありません。しかし、とても大切な役割があります。
もし遺言書が残されていれば、その内容を補完する覚え書きになります。特に、相続で争いが生じて裁判等に発展してしまった場合には、貴重な証拠資料にもなり得ます。
そして、遺言書が残されていないなら残された者にとっては大事な思い出の品となるのです。
どんな内容であっても、故人の想いを知った上でしっかり保管しておくべきでしょう。
まとめ
遺言書とエンディングノートとの決定的かつ重要な違いは、法的拘束力があるかないかということです。
適正な遺言書をきっちり残したいのであれば、公正証書遺言をお勧めします。
そして、エンディングノートに関しては、遺言書との違いを踏まえて、自分なりの書き方、残し方を考えてみるのもいいかもしれません。