生前贈与で不動産を贈与するメリットと注意点

生前贈与で不動産を贈与するメリットと注意点

生前贈与といえば、相続税対策と考える人も多いと思います。
確かに、生前贈与には相続税対策にもなりますが、それ以外にも、相続人同士のトラブル防止や、贈与者の気持ちを反映できるなども、生前贈与の大きなメリットです。

また、生前贈与は現金を贈与することで節税になるということだけに焦点が行きがちですが、不動産の生前贈与もうまく活用することで節税になります。

生前贈与で不動産を贈与するメリット

生前に不動産を贈与するメリットは、次の4つです。

1.贈与する相手を決められる

不動産を含め生前贈与におけるメリットは、贈与者が、贈与する相手を自分で決めることができる点にあります。
子どもに対する愛情は平等でも、それぞれの将来を思うと、残すべき財産が平等というわけにいかないケースが存在するのです。

例えば、家を継いでくれた息子、田舎に残りいつも駆けつけてくれる娘、病で思うように収入を得られず苦労している子、このような子どもたちに、何か財産になるものを残してやりたい、その思いを実現する方法が、生前贈与なのです。

相続では、遺言によって、相続分について意思表示をすることも可能ですが、相続には遺留分という、配偶者やその子に、最低限の取り分を請求する権利が生じます。
そのため、確実に特定の相手に財産を与えたい場合は、生前贈与が最も有効です。

2.相続税を減らすことができる

不動産に対する贈与税・相続税ともに、宅地は主に路線価、家屋は固定資産税評価額を用いて計算された評価額に税金がかかります。

贈与税と相続税、どちらが高いかというと、ずばり贈与税です。
ですが、以下に紹介する2つの贈与税の特例をうまく活用すれば、結果として相続税を減らすことが可能です。

配偶者に住宅を渡したい場合の特例(贈与税の配偶者控除)

夫や妻に対し、「住宅」又は「住宅を購入・増築するための資金」を贈与する場合、その評価額あるいは購入資金のうち、2,000万円までが非課税となる特例があります。

また、贈与税は、1人あたり年間で110万円の基礎控除があるため、もし配偶者が、他から贈与を受けていなければ、最大で2,110万円の非課税が適用可能です。
例えば、夫が土地、妻が家屋の所有権を有する状態で、もし夫が死亡すれば、土地に相続税がかかります。

しかし、この土地を生前に妻に贈与し、もし、その評価額が2,110万円を下回っていれば、贈与税も相続税もかかりません。
ただし、この特例には、注意点が2つあります。
1つは婚姻期間が20年以上の夫婦間でしか適用されないこと、もう1つは、2,110万円を大幅にオーバーする贈与は、贈与税の方が高いことから、かえって相続よりも税金を払う可能性があることです。

子に住宅を買ってあげたい場合の特例(住宅取得等資金の贈与)

20歳以上の子や孫に対し、一定の要件を満たす住宅の購入、新築、増改築するための資金を渡した場合も、贈与税が一部非課税となります。
非課税額の範囲内で資金を贈与することで、相続財産を減らすことができる有効な税金対策です。

平成29年10月1日~平成30年9月30日までは、最大で1,000万円までが非課税となりますが、上限は、住宅の性能によって異なります。

なお、この特例には、下記の4つの注意点があります。

  • 住宅そのものの贈与ではなく、資金の贈与であること
  • 対象となる住宅には一定の要件があること(床面積など)
  • 建売住宅や分譲マンションの場合、贈与を受けた翌年の3月15日までに、鍵などの引き渡しを受けている必要があること
  • 贈与を受けた子、孫などの年齢が20歳以上で、かつ年間所得が2,000万円以下であること

3.比較的短期間に贈与が可能

不動産を贈与する際は、所有権移転登記をしなければなりません。
けれどこの手続きは、専門家に依頼する必要はなく、贈与契約書を作成すれば、あとは自分で役所や法務局を回れば行うことができます。
そのため、比較的短期間で行える贈与なのです。

4.相続人同士のトラブルを避けることができる

相続の場合、遺言による指定がない財産については、相続人同士の話し合いによって、分ける必要があります。
複数の相続人がいる場合、何ひとつトラブルなく決定できることはまれです。

このようなことが無いように、生前のうちに、大きな財産を振り分けておけば、相続時の火種が減らすことができます。

不動産の生前贈与には相続時精算課税制度を利用する

不動産の贈与を受ける際、心配なのは贈与税です。
不動産の評価額は、一般的に高額であるため、110万円の基礎控除では収まりません。
しかも、お金をもらったわけではないのに、税金だけ払うとなると、むしろ生活が苦しくなってしまいます。
そのため、若い世代にはかえって迷惑、なんてことも考えられます。

そこで設けられた制度が、「相続時精算課税制度」です。
この制度を一言で表すと、「納税の先延ばし」になります。
税金を減らす措置ではないことに注意しましょう。

相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度を選択すると、特定の贈与者から、通算2,500万円分の贈与まで、贈与税の支払いを、相続の時まで待ってもらえます。
そして、相続が発生した時に、この2,500万円までの資産を、他の相続財産と合算して、相続税を課税されるという仕組みです。
この制度に適しているのは、一度に大きな額の贈与を行う場合、まさに不動産などの贈与でしょう。

適用対象

相続時精算課税制度が適用されるのは、その年の1月1日時点において60歳以上の贈与者から、同じく20歳以上の贈与者に対する贈与についてです。
なお、先述しました、子に住宅を買ってあげる場合の住宅取得等資金贈与の特例について、相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与者が60歳未満でも適用できます。

相続時精算課税制度の注意点

相続時精算課税制度を選択する場合には、いくつか注意点があります。
かえって損をしてしまう場合もあるため、十分に検討してから選択しましょう。

1.一度選択したら撤回できない

相続時精算課税制度は、一度選択したら、その贈与者からの贈与は、相続の時まで、相続時精算課税制度を適用しなければなりません。

なぜここに注意が必要かというと、相続時精算課税制度は、110万円の基礎控除と併用ができないからです。
つまり、その贈与者からの贈与は、通常、無税である110万円にまで税金がかかってしまいます。

しかも、2,500万円を超えた後の贈与は、金額の多寡にかかわらず、全て20%の贈与税がかかります。
通常の贈与では、年間300万円以下の場合、税率は15%で済むのですが、この制度では、2,500万円を超えた後は、仮に年間1万円の贈与でも、20%の税金がかかる、ということになります。
つまり、2,500万円を超えた後の年間の贈与額が少なければ、通常以上の贈与税を支払うことになるのです。

ちなみに、他の贈与者からの贈与であれば、110万円の控除は適用できます。
例えば、父からの贈与に対し、相続時精算課税制度を選択していても、母からの贈与には110万円の控除を適用できるのです。

2.法律改正があった場合は不利になる可能性

相続時精算課税制度では、通算2,500万円までが相続税、それを超えた分に、一律20%の贈与税がかかる仕組みです。
もし今後、相続税が上がり、贈与税の税率と逆転するようなことがあれば、不利になる可能性があります。

3.小規模宅地等の特例を一緒に利用できない

小規模宅地等の特例とは、居住用や事業用の宅地を相続した場合に、一定の割合(50%又は80%)でその評価額を減額できる仕組みです。
この特例の適用対象は、「相続」で取得した宅地に限られるため、相続時精算課税制度を使って「贈与」を受けた宅地には、適用できません。

4.物納ができない

相続の場合、金銭で税金を納めることが困難な場合は、相続財産で税金を納める「物納」が認められていますが、相続時精算課税制度をはじめ、贈与の場合は基本的に物納ができません。
これは、相続という偶発性の高い事象に限って、特別に物納が認められているためです。

ちなみに、相続発生前3年以内に行われた贈与(相続時精算課税制度は選択していない)については、生前贈与加算といい、相続税が課せられますが、この場合も偶発性が高いことから、物納が認められます。

5.登録免許税と不動産取得税は免除されない

相続で取得した不動産の場合、登録免許税はかかりますが、税率が優遇されており、不動産取得税は免除となります。
ところが、贈与で取得した場合は、登録免許税は相続より高く、不動産取得税も発生します。

ただし、新築住宅取得の場合の不動産取得税については軽減措置が受けられる場合があります。
都道府県の基準を確認の上、「不動産取得税課税標準の特例適用申告書」を提出しましょう。

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