遺産分割調停は弁護士に相談すべきなのでしょうか。
それとも自分たちで手続きをする方が良いのでしょうか。
もしも弁護士に依頼した方が良いのであれば、事前に知っておきたいところです。
早めに手配や準備がしやすくなるに越したことはないでしょう。
それでは、実際に遺産分割は弁護士に相談すべきなのかどうかを書いていきます。
また、話し合いでは決まらなかったときに取る法的な手段と流れについてもお教えします。
遺言がない場合は遺産分割協議
被相続人が亡くなり、法律的に有効な遺言書がない場合、相続人の間で話し合いを行い、遺産分割を行うことになります。
話し合いで全員が納得することができれば、どのように分割してもかまいません。
そして、話し合いの結果を遺産分割協議書にまとめます。
法律事務所への相談で法的な観点からの助言を
しかし、中には話し合いが上手く行かない場合もあるでしょう。
相続は気心が知れた親族間の問題であるだけに、感情的になりがちです。
それに加えて、個々人に思惑があれば、なおさら話し合いがこじれてしまいます。
そこで弁護士事務所に法律相談に行くことで、感情的な話し合いが解決に向かうチャンスとなるほか、法的な手続きについて詳しく知ることができます。
相談に行く際は必要書類を持参して、決まった相談時間に間に合うようにしましょう。
予め質問事項をまとめておくと、知りたかったことを訊きそびれることが防げます。
自分に都合の良い事だけを話していては真相が伝わりませんので、弁護士にはありのままを話しましょう。
そうすることで、解決への近道にもなります。
話し合いがつかないときは、遺産分割調停を
法律事務所に相談しても、話し合いが決着しない場合は裁判所の力を借りることになります。
相続は家庭内の問題とされます。こういった家事事件は訴訟を起こす前に、まずは家庭裁判所に調停を立てることが一般的です。
これを遺産分割調停といいます。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は以下のような流れで進められていきます。
1.法定相続人を確定させる
戸籍謄本は裁判所に提出が必要なものですので、事前に取り寄せる必要があります。
その際に、相続人を確認します。
相続人が明白だと思っていても、稀に遺族の認識と実際の戸籍謄本の記載が異なる場合があります。
知らない相続人がいたとなると、後でトラブルの原因となりますので、戸籍謄本は必ず確認しましょう。
2.相続財産を調査する
裁判所には、被相続人にどの程度の財産があるのかを報告しなければなりません。
そのため、相続財産をまとめた財産目録を作成します。
3.家庭裁判所に申立をする
被相続人の最後の住まいを管轄する家庭裁判所に遺産分割調停の申立を行います。
遺産分割調停申立書を作成し、手数料、郵便切手、戸籍謄本、財産目録などと一緒に提出します。
4.調停期日に出頭し、話し合いをする
調停期日に家庭裁判所に出頭し、話し合いをします。
調停委員が申立人と相続人に交互に事情を聴取していきます。
何日かに分けて話し合いを継続していくこともあります。
相続人・法定相続分の範囲、遺産の範囲、特別受益の確定、分割方法の確定など、遺産分割に関する決めごとは全て行います。
5.調停の成立
話し合いがまとまれば、調停は成立となります。成立が難しいと判断されると、不成立となります。
遺産分割審判の流れ
調停でも解決しなければ、審判に移ります。
審判は以下のような流れで進んでいきます。
1.遺産分割審判の申立
遺産分割審判申立書を作成し、それを管轄の家庭裁判所に提出します。
このとき、証拠資料の添付も必要となります。遺産分割審判を申し立てます。
2.審判期日の出頭
家庭裁判所によって指定された審判期日に家庭裁判所へ出頭します。
相続人が一堂に会し、裁判官(家事審判官)が審判を進行していきます。
各相続人がそれぞれ書面で主張をし、それを裏付ける各種の資料を提出していきます。
全ての主張が終わるまで、何日かにわたり審判は続きます。
3.話し合い
場合によっては、臨時の話し合いの機会が設けられることがあります。
話し合いが成立すると調停調書が作成され、審判が終了します。
4.家庭裁判所による審判
最終的に、各相続人の主張にもとづいて、裁判所が遺産分割の方法を決定します。
この審判は告知日から2週間で確定します。
それまでであれば、不服がある者は即時抗告ができます。
遺産分割調停を有利に持っていきたい場合は、誠実な対応を
協議が破綻し、一度法に訴えたのであれば、相続人は互いに「貰えるものは貰いたい」「何が何でも主張を曲げたくない」と頑なになっていることが多いでしょう。
しかし、そこで求められるのは、感情的な主張ではなく、誠実な対応です。
申立に積極的に望み、節度を持った態度で、正直に話すことが大切です。
こういった態度は調停に限らず、訴訟においても大切なことです。
弁護士がいれば、遺産分割調停のプロセスをサポート
弁護士は法律のプロです。
遺産分割調停を弁護士に依頼することで、必要書類の取得から作成まで任せることができます。
申立の後も代理人となったり、同席してもらったりすることが可能です。
ただ、遺産分割調停は裁判ではありませんので、代理人弁護士を立てていても、相続人本人が出席しなければなりません。
依頼人にとっては、弁護士を立てることで、書類集めの準備などの手間がかからなくなるという大きなメリットがあります。
弁護士がいれば、遺産分割調停が有利に進む可能性も
遺産分割調停・審判において、分割方法等の決定の際に重要な存在となるのは調停委員です。
調停委員に発言や主張、証拠の信頼性が疑われてしまっては、有利な決定は下されないおそれがあります。
誠実に真実を話し、丁寧に対応していくことで調停委員に信頼に足るという印象を与えることができます。
調停委員にとって、法律の専門家である弁護士が付いていれば、それだけその人は法的根拠を持った主張を行っているとみなされるでしょう。
審判の場合も、弁護士が付いていることで、家事審判官に法的に妥当な主張を行っている印象を与えることができます。
弁護士を立てることは裁判ほど有利には働きませんが、印象が悪くなるということはないと言えます。
- 遺産分割のトラブルに関するポイント
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調停・審判でも解決できないときは訴訟で争うしかありません。
やはり訴訟となれば、弁護士に依頼することになるかと思います。
そういったことを考えると、遅かれ早かれ弁護士に相談することになる場合は少なくないでしょう。
早めに弁護士に相談をし、色々なサポートを受け、調停を有利に持っていくか、ご自身で書類集めや手続きを行い、何日間もの話し合いを重ねた後で、訴訟となって初めて弁護士に依頼するするのかの違いです。
相続の価値も当然大切ですが、相続人の時間と体力も有限であり、大切です。
時間を有効に使いたいという方はぜひ弁護士にご相談ください。