相続財産を自分のものにするには、名義変更の手続きが必要。
遺産分割により相続する財産が決まったら、その財産を自分の名義に変更する手続きを行います。土地建物などの不動産や預貯金、株式、借地権や借家権、自動車、ローンなど、財産の種類に応じて手続きとその方法はさまざまです。
例えば、不動産を相続する場合には、法務局で「相続による所有権移転登記」の手続きをして名義を書き換えることになります。この登記の手続きをしないままでは、所有権を客観的に証明することができません。
また、手続きに必要な書類も相続財産によって異なります。
被相続人の除籍謄本(全部事項証明書)・相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)・相続人の住民票・相続人の印鑑証明書の4つはほぼすべての手続きに共通なので、あらかじめ数通ずつ用意しておくとよいでしょう。
主な財産の相続手続き
相続財産 |
手続き |
手続きの届け先 |
必要書類 |
預貯金 |
名義変更 |
預貯金先の金融機関 |
依頼書・預金通帳など |
株式 |
名義変更 |
証券会社 |
株式名義書換依頼書・株券など |
不動産 |
相続による所有権移転登記 |
不動産の所在地の法務局 |
土地(建物)所有権移
転登記申請書・固定資
産税評価証明書など |
借地権・ 借家権 |
名義変更 |
地主・家主 |
相続人の印鑑証明書を求められる場合がある |
自動車 |
移転登録 |
陸運支局 |
移転登録申請書・自動車検査証・自動車損害賠償責任保険証など |
ローン |
名義変更 |
銀行などローン契約の債権者 |
相続人の所得証明(源泉徴収票・確定申告書)など |
※被相続人の除籍謄本(全部事項証明書)・相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)・相続人の住民票・相続人の印鑑証明書がほぼすべての手続きに必要です
基礎控除額を超えたら、相続税の申告・納付を。
相続によって財産を取得すると、その財産に応じて相続税がかかります。
ただし、すべての人が相続税を納めるというわけではありません。
相続税には5,000万円+1,000万円×法定相続人の数までの基礎控除があります。
この基礎控除分よりも取得した財産が少なければ相続税はかからず、多ければ相続税を納めることになります。
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人なら、基礎控除額は8,000万円。
この場合、相続財産の正味額が8,000万円以下であれば、相続税はかかりません。
一方、正味額が1億2,000万円だとすると、基礎控除額を差し引いた4,000万円に対して相続税がかかるというわけです。
- 相続税の申告・納付のポイント
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・相続税はすべての相続にかかるとは限らない
・相続財産の正味額が基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)より多い場合に申告・納税が必要
では、相続税の算出について簡単に説明しましょう。
原則として、相続税は死亡した人の財産を相続や遺贈によって得た財産にかかります。
ですから、まず相続財産の金銭的な評価を知ることから始めます。
相続税がかかる財産
本来の相続財産 |
被相続人が亡くなった時に所有していた財産で、金銭に見積もることができるすべてのもの |
現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋、事業(農業)用財産など |
みなし相続財産 |
本来の相続財産ではなくても、税法上、相続財産とみなされて課税されるもの |
生命保険金、死亡退職金、損害保険金(自動車事故死などの場合)など |
上記のうち、生命保険金や死亡退職金などの非課税財産や、被相続人が残した借金などの債務、お葬式にかかった実費は差し引くことができます。
- 相続税を算出する際のポイント
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相続財産の正味額をまず計算
本来の相続財産+みなし相続財産-非課税財産-債務・葬式費用=相続財産の正味額
また、各種税額控除(配偶者控除・未成年者控除・障害者控除・相次相続控除・贈与税額控除)や小規模宅地等の特例を使って相続税額を安くすることができます。
「相次相続控除」の詳しい説明はコチラ
「小規模宅地の特例」の詳しい説明はコチラ
相続税の計算はとても複雑です。
相続財産の正味額から、各相続人の相続税額を法定相続分の税率で計算。これをいったん合算した相続税総額を算出します。この相続税総額を実際の相続割合に応じて按分し、一人ひとりの相続税額を出すのです。
このように、相続税を自分で計算するのは大変な作業です。間違いを防ぐためにも、専門家のサポートを受けることをオススメします。
当サイトがオススメする遺産相続の専門家はコチラ
相続税の申告・納付の方法。税務署で10ヶ月以内に手続きを。
財産相続のステップもいよいよ大詰め。
相続税の申告・納付が必要な方は、手続きを済ませなければなりません。申告・納付の期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月目の日です。土・日・祝日などの休日にあたる時は、その翌日が期限になります。
期限までに申告・納付をしなかった場合には、本来の相続税の他に加算税などの重いペナルティが課せられることになるので注意してください。
具体的な手続きとしては、相続税の申告書に相続財産の明細書や計算書などを添付し、税務署の窓口もしくは送付にて提出します。提出先は被相続人が亡くなった時の住所地を管轄する税務署で、相続人の住所地ではありません。
納付は税務署だけでなく、金融機関や郵便局の窓口でもできます。
金銭で一度に納付するのが原則ですが、特別な納税方法として延納と物納制度があります。延納は何年かに分けて納めるもの。物納は相続などでもらった財産そのもので納めるものです。どちらも、相続の申告・納付の期限前に、申請書を税務署に提出します。
「物納制度」の詳しい説明はコチラ
相続税の申告書にはさまざまな様式があり、記入には手間がかかります。
書類の不備や記入間違いを防ぐためにも、専門家に作成してもらうとよいでしょう。
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相続税の申告・納付の手続き
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手続きの届け先 |
手続きに必要な書類 |
申告 |
被相続人の住所地を管轄する税務署
※送付でもOK |
相続税の申告書 ※税務署で入手できます
相続財産の明細書などの関係書類 |
納付 |
被相続人の住所地を管轄する税務署・銀行・郵便局の窓口 |
納付書
※税務署や金融機関に備え置かれています |
延納 |
被相続人の住所地を管轄する税務署 |
申請書 ※税務署で入手できます
関係書類 |
物納 |
被相続人の住所地を管轄する税務署 |
申請書 ※税務署で入手できます
関係書類 |
相続税の申告・納付が済めば、遺産相続の手続きはすべて終了です。
なお、遺産分割の協議がまだ成立していない場合でも、いったん法定相続分で申告・納税をする必要があります。詳しくはSTEP5でご紹介します。