老いていく親に今からできること – 寝たきりにならないための老いのレッスン

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お父さんやお母さんが「年をとったなあ」と感じたことはありませんか?

髪が白くなった、シワが増えたといった見た目は当然のことですが、ちょっとした言葉が出てこなくなった、歩く速度が遅くなった、あるいは背中が何となく頼りなく感じられる、といったことです。

これが「老い」の始まりです。

でも、まだこの段階なら老いをストップさせる、あるいは老いるスピードを緩めることができるかもしれません。

今回は、そうなるため、健康を維持するために子供が親に対してどう接したり、今からできることを紹介したいと思います。

もしあなたが50代~80代の親を持つ20代~40代で、老いていく親を見て何かしてあげたい、精神的にも肉体的にも好奇心全開で毎日をハツラツと生きてほしいと思っているならば、この記事をぜひ読んでもらいたいと思います。

逆に、親に歳をとっても楽しんで生きて欲しいという希望がないのであれば続きを読む必要はないかもしれません。

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50代も半ばを過ぎると、老いの兆候は当たり前に起きてきます。さらに60代、70代と年齢を重ねるごとに老いていくのは自然の流れで、多くの人はそのまま健やかに老いていくはずです。

でも、認知症が始まったり、足腰の痛みがひどくなって歩けなくなった姿を想像すると、やるせなくなってきますよね。

認知症による家庭内不和は日常茶飯事で、親の介護のために職場を去っていく人も増えるなど、「親の老い」からくる悩みは避けられない問題になってきています。

健康と病気の中間 「フレイル」をご存知ですか?

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いきなり深刻な話になってしまいましが、老いはそんなに短期間に進むことはありません。

心身が弱っていく過程には「フレイル」という段階があるのです。

日本老年医学会が2014年5月に名付け、高齢者自身がそれに気づいて予防活動をする必要性を提言しています。

フレイルって何?

人は年齢を重ねるにしたがって心身が衰えて要支援、要介護に至るのですが、フレイルは健康と病気の「中間的な段階」です。

学会では75歳以上の多くの人がこの段階を経て要介護状態に陥るとしています。
国立長寿医療研究センター(愛知県大府市) が脳卒中などの持病がある人を除く65歳以上の5100人を対象に行った調査では、11%の人が該当しました。

以前は「虚弱高齢者」と呼ばれていた段階ですが、老年医学会では、ちょっとした気づきと支援があればまだまだ改善でき、坂道を転げ落ちるように一気に老化が進むのを防いで要介護になる時期を先送りできる…などとして、弱り始めの時期を適切に見つけることの大切さを訴えています。

フレイルを見つけるチェック項目

2014年6月に開かれた老年医学会のシンポジウムでは、フレイルを適切に見つけるために、次の6つのチェック項目が紹介されました。

  1. 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっているか
  2. 週に1回以上外出するか
  3. 前に比べて歩く速度が遅くなってきたか
  4. 6カ月間で2〜3キロ以上の体重減少があったか
  5. 5分前のことが思い出せるか
  6. わけもなく疲れたような感じがするか

このうち2つ以上が当てはまる人は、要介護認定につながりやすいことを示すとして、適切な気づきと適切な対応の指標にと提案されたのです。

フレイルの予防法としては、十分なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを含む食事を取る、ストレッチやウオーキングなどを定期的に行う、身体の活動量や認知機能を定期的にチェックする…などが挙げられています。

この件について詳しくお知りになりたい方は、

中日新聞の医療サイト
高齢者の心身の弱まり『フレイル(心身の弱まり)』予防を

をご覧ください。 詳しいチェックリストも掲載されています。

親自身も不安 「認知症になったらどうしよう…」

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長々と説明したのは、要介護になるのを防いだり遅らせるためには、フレイルになるのを防ぎ、フレイルの段階に入ってしまったら、高齢者自身がそれに気づくことが大切だということを理解していただきたかったからです。

歩く、座る、食べる、話す、見る…生きていれば当たり前のことを「年を取ったから」「ちょっと腰が痛いから」などと理由をつけて家の中でじっとしていているのでは老化に拍車が掛かるばかりです。

この段階で気づいて積極的に人と交流し、体を動かし、趣味を見つけて楽しみ、食べ物に気をつける、といった生活習慣改善に取り組むべきだと専門家は指摘しています。

ご本人が気づかなければ、あなたが気づいてあげて、こうした取り組みに駆り立てるよう話しかけてあげる必要があるのです。

老いを身近に感じた人が最も恐れるのは、自分の体が不自由になったりしてわが子に迷惑を掛けるのでは、という不安です。

自分の介護のためにわが子が退職する羽目になるといった介護の問題だけでなく、認知症になってわが子の見分けがつかなくなったら…という恐れは、高齢者の誰もが最悪のケースとして想定していることです。

なので、「そんなふうにならないためにも」と、外へ出てアクティブに活動するよう説得することが効果的なんです。

認知症の問題は、日本が抱える最大の社会的課題

2020年に患者は約300万人に達し、65歳以上の10人に1人、85歳では4人に1人が発症すると予測されています。

認知症は、わかりやすくいえば「物忘れなどで判断能力が失われ、笑い話では済まないほどの日常生活での失敗を繰り返している状態」です。

約60%がアルツハイマー型認知症で、残りがレビー小体型認知症と脳血管性認知症です。

アルツハイマー型認知症だと発症から身の回りのことができなくなるまでの7〜8年間は、歩行障害や嚥下障害は起きません。

レビー小体型認知症では発症1年以内に小刻み歩行や動作緩慢・手足の震え といったパーキンソン症状になり、歩くには杖や介助が必要になります。

介護というと体が不自由になる面に目が行きがちですが、認知症は体が不自由になる上に、記憶障害が出るのです。
先に書いたように、周囲に迷惑を掛けたくないと思っている高齢者が恐れるのは無理もありません。

日本は世界きっての長寿国

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人は必ず死にます。その最期を迎えるとき、高齢者はどんな死を望んでいると思いますか?

「ピンピンコロリ」、略してPPKです。

死ぬ間際まで体のどこにも痛みがなくピンピンしていて、コロリと旅立つ、これが誰にも迷惑を掛けない死に方とされています。

ところが、日本は世界きっての長寿国なのに、年をとってもピンピンしている健康長寿の人はそんなに多くありません。

逆に多いのが長期の寝たきりになって亡くなる人です。

ちょっと不謹慎な呼び方ですが、「ネンネンコロリ(NNK)」といわれます。

ピンピンコロリ で最期を迎えるための目安とされているのが「健康寿命」です。

介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示すデータで、厚生労働省の発表では

2013年は

  • 男性71.19歳(13年の平均寿命は80.21歳)
  • 女性74.21歳(同86.61歳)

前回調査の2010年時点での健康寿命は

  • 男性70.42歳
  • 女性73.62歳

男女とも0.5歳以上延びていますが、平均寿命との差は9〜12年もあります。

この年数の差が寝たきり、または介護を受けている期間ということになります。

健康長寿の余生を送ってもらうために、何をすべきなのでしょう?

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まず必要なのが、積極的に外へ出て人と交流し、体を動かし、趣味を楽しむ、といったことをアドバイスすることです。

人や社会との関わりは脳に刺激を与え活性化を助けます。

「年だから」はシニアに禁句です。

いやな顔をされたら「元気で暮らしてくれるためには必要なことなんだから、聞いてよ」といった具合に、多少強引でも強く訴えましょう。

先に書いたフレイルについての情報を教えてあげるのも効果があるでしょう。

体を動かすことは筋肉の衰えを防ぎます。体を動かすという面では心強いデータがあります。

厚生労働省の調査では、1986年からの25年間で、20代〜30代でスポーツをした人の割合は約20ポイントも減っているのに、60〜64歳は3.2ポイント増え、65〜69歳も7.8ポイント増えているんです。

確かに昼間の温水プールでは、水中ウオークをしているシニアの姿が目立ちます。
シニア世代が、健康のために運動に目覚めている裏付けといえるでしょう。

こんなふうにシニアの運動が盛んだということを紹介してあげてはいかがでしょう。

どのように運動し楽しめば良いか?

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いくら運動が良いといっても、無理な運動は禁物です。
特に若いころにスポーツをしていた人は要注意。

昔のイメージで動き、衰えた体力以上に無理をしてしまうことがあるからです。

専門家は「軽め、弱め」がキーワードといい、「ニコニコと笑い、息切れせずにおしゃべりしながらできる程度で」とアドバイスしています。

1分間の心拍数は、210から自分の年齢を引いて0.6から0.7を掛けた数値が適度で、60歳なら90〜105、70歳なら84〜98の範囲です。

こうした適切なアドバイスをしてあげることもお忘れなく。

楽しむことが大切!

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運動だけでなく、楽しみもなければモチベーションは上がりません。

例えばお酒。

「年だから」などとストップをかけず、むしろ適量を勧めてあげた方がいいでしょう。

アルコールは適量を飲めば善玉コレステロールを上げ、虚血性心疾患を抑制して動脈硬化を防ぎます。

問題は量です。

日本酒1合だと心筋梗塞を抑制しますが、3合になると心筋梗塞になりやすく、死亡率が高まります。
1日1.5合の酒を飲み続ける人は高血圧になりやすく、飲まない人の20.4倍も脳卒中になりやすいというデータがあります。

適量といえるのは、日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス1〜2杯、焼酎は0.5合、ウイスキーはダブルで1杯、といったところです。
「百薬の長」というのは、ほどよい量を飲んでいる場合に限っていえることです。

お酒に限りません。犬や猫などペットとの触れ合い、家庭菜園や花づくりなど土とのふれあい、魚釣りや芝居見物、さらには孫との遊園地行きなど、楽しみはその気になればいくらでも探せるはずです。

気になるのは、高齢の人は「年金生活なのに遊んでいては…」と、趣味や遊びにお金を使うことに抵抗があること。そんな遠慮というか後ろめたさを取り払って背中を押してあげることも大切です。

「楽しんでくれて元気でいてくれることが、子としての喜びなんだよ」といった具合に。
お小遣いの援助があれば言うことありません。お出かけの際に車で送るなどのサポートも効果的でしょう。

ただし甘えさせ過ぎないこと。甘えは、自立心をなくすきっかけになりかねません。

最後に1番肝心のことは?

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何よりも大切なのが、あなたが健やかに自立して幸せな生活を送っていることです。

親の一番の関心事は、やはりわが子のこと。家族の絆を感じ、親しく触れ合えることが何よりのモチベーションとなります。

「この子たちのためにも元気でいなくては」と思うことが心身の健康をつくり、生き生きした「老い」につながるはずです。

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