弁護士の役割

弁護士は、法律の専門家として遺産相続の幅広い業務に対応できるのが、他の士業との大きな違いです。また、相続人の間で発生するトラブルを代理人として解決できるという重要な役割を持ちます。

弁護士の遺産相続における強みは、示談や訴訟など法的トラブルが発生した場合に直接介入できる事と、法令で許可された相続業務範囲の広さということになります。

ここでは、弁護士が対応できる遺産相続の役割について解説していきます。

弁護士は紛争や法的トラブルの専門家

弁護士が対応できる遺産相続の業務を説明する前に、まずは弁護士と他の士業との違いを簡単に説明します。

と言うのも、いざ遺産相続をする段になって誰に相談すれば良いか分からないという方が思いの外多いためです。

弁護士と司法書士、行政書士の相続業務の制限

法的なトラブルが起きたときに誰に相談すればよいか考えた時に、弁護士の他に司法書士、行政書士を思い浮かべる方は多いかと思います。

しかし、弁護士と他の士業との間には対応できる業務範囲に大きな違いがあります。

弁護士の場合は法律業務の範囲は無制限です。法律に関するあらゆる相談を受けることができますし、紛争となった場合には代理人となって調停、訴訟などにも対応できます。

しかし、司法書士が対応できる法律業務は限定的です。司法書士は請求額が140万円を超える民事事件は代理人になれませんし、受任することも法令で禁じられています。

遺産相続では、多くの場合で140万円以上を超える事案が多いと思います。このように遺産額が大きいケースでは司法書士への依頼は適していません。

また、行政書士の場合には業務範囲はさらに限定的されます。もともと行政書士の仕事は書類作成(代書)とそれに関する法律アドバイスのみとなっています。遺産相続の事案では、代理人業務や相続コンサルティングは認められていません。

弁護士法では以下のように規定されています。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止 弁護士法72条)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

相続における総合的な法律相談、手続き、代理業務は弁護士への依頼が適任ということなのです。

弁護士への遺産相続の相談とタイミング

遺産相続の手続きでは、被相続人が生存中におこなう生前対策と、亡くなった後に相続人の間でおこなわれる相続対策の2つのケースがあります。

弁護士に依頼するメリットを見ていきましょう。

相続の生前対策を弁護士に依頼するメリット

自分の死後に備えて生前対策をおこなうメリットは大きく2つあります。

1つは残された家族の間でトラブルが起きないようにするためです。被相続人が預金、株券、不動産など一定以上の資産を所有する場合には、相続を巡って配偶者、兄弟・姉妹で揉めるケースは頻繁にあります。

また、亡くなった後に遺産相続が原因で「家族の仲が悪くなった」というのもよくある話しです。遺言書、遺留分の問題を生前から対策することでトラブルを避けることができます。

また、マイナスの遺産(借金)を残してしまった場合も子供の将来に大きな禍根を残すことになります。借金は生前から適切に債務整理するなどして、子供の負担を減らしてあげる必要があります。借金問題の解決も弁護士の専門分野です。

2つ目は節税対策です。遺産相続では、相続人である子供が「相続税を払えなくなった」、「代々続いた土地を手放すことになった」ということがよくあります。子供にとって遺産相続が大きな負担となることがあるのです。

そのため、適切に生前贈与したり、土地の運用方法を考えておけば、残された家族がトラブルを抱えること無く遺産継承することができます。

弁護士は資産運用や節税の専門家ではありませんが、土地家屋調査士、税理士、ファイナンシャルプランナーなど他の専門家と連携して有用な提案をおこなってくれます。

相続の生前対策で弁護士ができること

弁護士ができる生前対策の代表的なものとして、以下の業務があります。

弁護士ができる生前対策の手続き

・死後の事務委任

役所手続き(死亡届)、葬儀手続き、年金手続き、解約手続き(生命保険、クレジットカード、公共料金など)、遺品整理。

・任意後見制度

病気や認知症などになって状況判断できなくなった時に弁護士が後見人になること。(資産管理、施設入所手続きなど)

・遺言書の作成

法的に有効となる、死亡後の本人の意思や遺産分割を書き残した文書を作成。

・遺留分の相談

相続人以外の人に相続させたい場合の交渉手続き。

・生前贈与

生前から子供・孫、第三者に遺産を贈与すること。相続税非課税枠の利用、その他節税対策の提案。

・その他

相続トラブルのアドバイス、サポート業務など

遺産相続開始後に弁護士へ依頼するメリット

相続が開始された後に「遺言が不公平だった」、「遺産分割が納得できない」、「兄弟が不当な権利を主張する」など、相続人の間で遺産を巡るトラブルが起きることがあります。

このような紛争が一度起きてしまうと、話し合いは平行線となってなかなか問題解決できません。相続の事務手続きも手付かずとなって前に進まなくなります。

そんな、相続開始後には法律の専門家である弁護士が代理人になれば、相続人のトラブル調停、交渉から手続きまでがスムーズに進みます。

相続の開始後(被相続人の死後)に弁護士ができること

弁護士ができる相続開始後の手続き

・遺産分割手続き

法律に則った相続人の公平な遺産分割をサポート。

・遺産分割協議書作成

相続人の間で決まった相続内容を書面化。

・遺留分減殺請求

相続人の遺留分(相続権利)が侵害された場合の請求手続きサポート。

・遺産調査

被相続人の預貯金から保有する不動産、株券、生命保険などを調査。

・相続放棄

遺産相続の権利すべてを放棄する手続き。

・遺産の限定承認

親の遺産で借金と財産がどちら多いか分からない場合に態度留保の承認手続き。遺産がプラスになればそのまま相続。借金(マイナス遺産)が多かった場合には相続人の財産での返済義務が発生しない。

・相続税対策・申告

相続税をできる限り少なくして申告する。税理士、土地家屋調査士などと連携。

弁護士が対応できない遺産相続業務

弁護士にも、遺産相続の手続きで直接対応できない業務があります。

代表的なのは、相続登記手続き(名義変更)です。遺産相続では、故人から子供へ不動産の所有移転が発生することがありますが、この相続登記は司法書士の専権項目となっています。

また、相続税の確定申告は税理士の専権項目となっており、こちらも弁護士は対応できません。

相続登記申請、相続税申告だけを依頼するのなら司法書士、税理士に直接問い合わせるのが早いと思います。

しかし、不動産の移転や相続税の申告などの手続きが必要であっても、それ以外に「様々な相続問題を相談したい」、「兄弟で紛争が起きている」というような場合には、弁護士に真っ先に相談すれば、より良い解決へ向けてアドバイスを受けることができます。

総合的な相続法律を相談するなら弁護士にしましょう。

遺産相続を専門に扱う弁護士に相談する

相続問題は弁護士なら誰でも良いというわけではありません。弁護士にもそれぞれ得意分野というものがあります。遺産相続問題は、法律の知識だけでなく、不動産、節税、株券、保険など広範囲な商品・サービスに関する知見が必要です。

遺産相続は複雑な事案も多いため、相続問題を専門に扱っている弁護士でないとより良い解決が得られないことがあります。

遺産相続に強い弁護士を選びましょう。

弁護士の役割についてのポイント
相続トラブルにおいて、総合的に法的仲介や関与ができるのは弁護士のみです。多額の遺産がある場合や利害関係が複雑な場合には、相続問題解決の頂点に位置する弁護士に相談するのが確実です。

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